完全胸腔鏡下AVR

EMI社に作ってもらったeMICSノットプッシャーは、僧帽弁も当然ですが実は胸腔鏡下AVRでの使用も意識してデザインしました。 厚みが3mmと薄く、ヘッドも小ぶりなので狭いバルサルバ洞での結紮に適しています。 隣の糸にも引っかかりません。電解研磨の効果で糸の滑りも良く、楽々結紮できます。 もうすぐ使える様になるrapid deploy弁の固定糸を結紮するのにも多分良いのではないかと思います。このビデオの手術は、老人性ASにインスピリス21を使用し手術時間2時間05分でした。しかし胸腔鏡下AVRは僧帽弁形成よりだいぶ難しいので、鏡視下僧帽弁が楽々出来る様になってから手掛けた方が良いです。

図1

EMI ファクトリー

現在国内メーカーとして唯一、MICS用鋼製小物を作成販売しているEMIファクトリー様は、細かいオーダーにも応えてくれるので器具に対するこだわり派には非常に助かります。今回監修したほぼ究極のノットプッシャーとか、シャフトが曲がったセッシとかいくつか作って貰いました。特にノットプッシャーは、ヘッドが電解研磨よりツルツルなので、モノフィラメント糸が面白い様に結紮出来ます。糸が外れてしまう事も非常に少なく我ながら自信作です。会社の知名度がまだあまり高くないようで、どこからノットプッシャーを買えるのか?と良く聞かれます。社長の江見さんのメールアドレスを了承頂き載せておきます。営業さんが少ないようなので、社長様に直接お問い合わせください。

emin@emi-factory.co.jp

ノットプッシャー改良

私のデザインによるEMICS150ノットプッシャーに若干の改良を加えました。外形は変えずコアの部分を少し幅広にして、摩擦の大きめな糸への相性を改善しました。摩擦の大きめな糸(逆に言えば緩みにくい)をこのノットプッシャーで縛る時は生食をかけて滑りを良くすると、市販の大抵の糸を結ぶ事が出来ます。今後出荷されるものは一部改良品になると思います。結紮中の糸の外れにくさは、当初品からの変わらぬメリットです。一度使うと、もう他のは使いたくなくなるとは、某H先生からの評価です。

JMS心筋保護カニューレ

JMS1

ついにJMSさんに依頼していた、MICS用心筋保護(順行性)カニューレが完成しました。すでにあったopen surgery用のものを本管を4cm、圧ラインを6cm伸ばしてもらっただけで、ずっと前に見本品は出来ていましたが、認可が取れるのに2年を要しました。MICS用として求められる心筋保護カニューレの条件として、指で基部圧のかかりを確認できないため圧ラインは必須、さらに内筒針とカニューレの段差が少なく抵抗なく刺入出来る事、細目で嵩張らない、固定糸をかけるのが容易、十分な長さがある、等です。JMSカニューレはもともと高本先生の発案で作られ最後の条件以外はほぼ完璧でしたが、MICS用としては長さが足りず苦労していつも使っていました。 4cmと言わずもっと伸ばす事もできたのですが、細目のカニューレなので内筒針のたわみや注入抵抗の増大を防ぐためにあえて4cmの延長に留めました。これで、相当大きな体格の人でも十分な長さがあります。2回目順行性心筋保護液注入の際には、大動脈基部からの空気抜きが必須です。すこし保護液を注入した後、一旦注入を止めて圧ラインからシリンジで空気を抜きます。簡単に空気抜きが出来ます。この辺の構造も高本先生のお考えに最初からあった様です。

生産の立ち上がりの関係で、8月までは限定供給の様ですが9月からは普通に供給されるはずです。MICS用心筋保護カニューレは、これ一択で良いでしょう。

人工腱索乳頭筋固定用ノットプッシャー

さらに小型ヘッドを持つ150cというのも作ってもらいました。金色の柄の方です。これは、スーチャーキャッチャーのピンを閉鎖型にして、最初に軸糸を通してから使うタイプです。当然、結紮中に糸が外れてしまう事は無く、閉鎖型なので結紮中に腱索を引っ掛けてしまう事もありません。 ゴアテックス糸を乳頭筋に固定する場面での使用を念頭に置いています。僧帽弁形成中に乳頭筋に人工腱索を固定する回数は普通2回程度なので、最初に糸を通す手間よりも、深いところで結紮する際に糸の外れや腱索への引っ掛かりを気にしなくてよいメリットの方が勝るとの想定に基づいています。これも出先のM本K立病院の★野先生にいきなり使ってもらったところ、何だかもう教える事が無いくらい上手い事使っていました。コツとしては、針を落とす前に短いへガール持針器で糸を通して、そのまま助手が持針器で針を持ったまま軸糸アシストをすると良い様です。スライド37

新型ノットプッシャーEMICS150出来ました

図1

MICSの手伝いに行ったり、ラボトレーニングを行ったりする時感じる事の筆頭は「ノットプッシャーを制するものはMICSを制す」です。持針器、鑷子というのはMICS用に多少形が変わっても、基本的な機能はあくまで変わらないのでこれらが上手く使えない人はあまりいません。ところが、糸結びに使うノットプッシャーになると、今まで使ったことも無い道具なのでなかなか上手くいかないのも無理はありません。 従来のノットプッシャーのいわゆる「オムスビ型」のものと同タイプに属します。 従来品を8年程使ってきて大きな問題は無かったものの、時々糸を引っ掛けるスーチャーキャッチャーの部分が弁の腱索を引っ掛けたり、隣の糸を引っ掛けたりする事があり、また糸も割と外れやすいのが気になりました。 これらを改良して、ヘッドを小型化したノットプッシャーをデザインし「EMIファクトリー」様に製品化していただきました(EMICS150)。

1.鋭角部分の無いピン型のスーチャーキャッチャーとして糸切れを起こしにくくした。

2.手前のガードプレートによりノットプッシャーを引き上げる時に糸が外れにくくさらに腱索や隣の糸を引っ掛けにくい。

3.小型、薄型ヘッドとしてMICSAVRでの使用にも対応。

以上の様な特徴を持たせました。さらに「電解研磨」加工により表面を鏡面仕上げとして滑りを良くしてもらいました。ただし、糸とノットプッシャー間の滑りは良いのですが、糸同士の摩擦はヘッドが大型のものより若干大きくなるのは避けられないため滑りの良い糸を使うのが前提となります。また、練習をしなくてもこれを使えば簡単に糸結びが出来るというものではもちろんありません。使用した感想としては、特にモノフィラメント糸は滑り過ぎると感じる程抵抗なくノットが降ろせます。

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写真の赤いアルマイト仕上げの柄のものが汎用ノットプッシャーのEMICS150です。

従来品より糸は外れにくのですが、その分若干嵌めにくいので下の図の様に示指を糸の下に沿えて母指で上から押さえてピンに糸をかけます。

スライド7

捨てる事、得られるもの

テレビドラマでカッコいい役者さんが心臓外科医の役を演じる時、手術のシーンではルーペと輝くヘッドライトを着けるのがお約束です。医療指導の先生のお陰か、なかなかの手つきでワンハンドノットを作り糸結びをしています。これらは心臓外科医らしさを象徴するアイテムとも言えます。

しかし、私が完全内視鏡下AVRをする時、ルーペもヘッドライトも用手結紮も使いません。30年慣れ親しんできたものを捨てるのは一般的には抵抗があり、私も段階的に進めましたがある時点で割り切りました。目で見る代わりに3D内視鏡、指の代わりにノットプッシャーで全ての糸を結びます。

こうして割り切ると、指が届くところまで大動脈を引き上げたり、届く範囲の前胸部に創を作る必要がなくなります。もちろん開胸器も要りません。むしろワーキングスペースを得るためにあえて大動脈まで距離があり、美容的結果も良い側胸部に創を作る方がやり易くなります。大動脈基部が狭くても、遠くても「指が届くか?」という心配からも無縁になります。創も痩せ我慢して小さめにして、最後の真皮連続縫合で縫い縮めて「5cmでやりました!」と学会で見栄を張る必要もなくなります。人工弁が物理的に通過してくれる最小限で良いのでリアル4cmで十分となります。

手術に限らず、何でもかんでも折り込むよりいっそ捨てる事で得られるものもあると思います。ちなみにルーペは着けませんが、歳のせいで遠近両用眼鏡は必須です。

中国のMICS事情(II)

中国南方国際心血管病学会という会が4月に広州で開かれ、招かれたので行ってきました。  中国南半分の地方会です。 日本で言うと、関西胸部の様なイメージです。驚いたのは、中国のMICSは私と同じく3-portで行っておりさらに鏡視下手術も盛んでした。もちろん、全体から見たMICS割合は低いのですが取り組んでいる先生の技術レベルは相当に高いと感じました。広州の二つの病院も訪問しました。ちょうど日本でいう「お盆」にあたる期間であったため患者さんが手術を嫌がるらしく、手術が無かったので見学は出来ませんでした。もうひとつ驚いた事と言えば、Jバルブという中国製のTAVIがあって(本家のTAVIはまだ認可が下りていない様です)値段は何と400万円と日本でのエドワーズ、メドトロニックのTAVIと変わらない値段で売られておりそれでも治療を受ける患者さんは多く居るとの事でした。JはもちろんJapanのJではなく開発者の名前から付けられたとの事。9月にはまた中国の先生に日赤に来てもらう予定です。

EMIさんのドライラボキット

先日書いたEMIさんのドライラボトレーニングキットを借りています。自分では今更練習は要りませんが、先日勧めたからには使い勝手を知っておくべきと思いました。 なんといっても右の写真の様に、持針器鑷子とノットプッシャーが付いているのが驚くべき事です。私などは数年前にマイ持針器とマイ鑷子その他50万円ぐらいかけて買ってしまいました。実際の手術用の持針器と比べると使用材料のグレードを落とすなどしてコストダウンしているとの事でしたが、NC加工機にいれるデータはわざわざ別に起こすとさらにコストがかかるので多分部品の形は製品版と変わらないようです。実際に使っても、ガタもなく硬すぎず全く普通に使えます。タブレットではWIFI通信で西先生のデモンストレーション動画が見られます。これ見て練習するとよいでしょう。鏡視下MICSの練習も十分できました。付属カメラは若干100msec程度の画像の遅延がありますが、よほど操作のスピードが速い人以外は大丈夫のはずです。左写真の様に鑷子は主孔の隣のポートに入れると使いやすい。ここでひとつ長いMICS器具を使いこなすヒントをお伝えします。左写真で持針器の軸を創縁に当てています。私は操作中、必ず軸を創縁にコンタクトさせた状態で運針します。この方法を意識して行うと道具が格段に安定します。

MICSとダビンチも保険収載

ダビンチを使った僧帽弁形成が4月から保険適応となると報道されました。ダビンチ手術が保険適応となるからには、そのbaseとなる鏡視下手術があるのが当然なので胸腔鏡下僧帽弁形成も同時に保険収載される様です。従来僧帽弁形成手術はK-554、79860点ですが鏡視下MICSが何点になるのかは2月末頃にははっきりすると思います。 ここで、いつもの愚痴が出るわけですが現在日本で認可された順行性心筋保護注入用カニューレの中で、MICSでも間違いなく届く長さの物はひとつもありません。私がJ-MICSの新規デバイス委員長として某社に改良を依頼(改良と言っても途中の管の長さを4cm伸ばすだけ)している製品があり、工場の生産体制は完全に整っているのに1年半経ってもまだ認可が下りません。現在は届きにくいカニューレを指先でつまんで指が攣りそうになりながら使っている訳ですが、明らかに必要な器具を認可せずに術式だけ認可するのも整合性の無い話です。3月末までには認可されてほしい。でも、MICS加算認定の判断には厚労省に拍手。

もう一つ、点数が加算されるからと十分な準備無しにMICSやダビンチを始める事が無い様にしてほしいものです。J-MICSでは今後も定期的にドライラボ、ウェットラボを行っていきますので、これらに参加したりプロクターを最初の数例は呼んだりして安全に留意して始めてほしいと思います(J-MICS理事としてではなく、個人としての見解です)。