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下関心血管外科学会

2月末に下関にて濱野教授大会長にて心臓血管外科学会が開催されました。私は会期中3題の指定演題があり、MICSループテクニックの遠隔予後、単独メイズ手術、もう一つはヨーロッパ胸部外科学会EACTSとの合同セッションでの3ポート3D法のMICSに関する紹介でした。

EACTS合同セッションではコロナ禍を挟んで久しぶりの英語セッションでの発表でした。まあまあ準備していったのでEACTS members の先生にも伝わった様です。ダビンチは3-port法に基づいて設計されており普通の鏡視下でも3-portで行うのは理にかなっているのになぜか海外ではそうでないのは歴史的な理由がある訳です。創始者のバナーマン先生がslit法で始めた為そのスタイルが継承されている様です。当のバナーマン先生はECSCのミーティングで当院の3-port法の発表をお聞きになり非常に良い方法だと言って下さったのですが。

EACTS合同セッション終了後集合写真

ヨーロッパではあまりに使う人がいないのでダビンチを売るIntuitive surgical 社が心臓領域でのサービスを終了したと聞いていたのですがバルセロナのDaniel Pereda先生(右から四人目)はシールドトロッカーを使用して人工気胸陽圧下にダビンチを使った僧帽弁形成をしていると発表がありました。確かに短時間でスムーズにやっている様です。いろいろ工夫があり若いのに、いや若いからこそ先入観にとらわれないアイデアマンで素晴らしいと思いました。ただし二酸化炭素陽圧下に血管系を開けるのは、腹腔鏡手術におけるCO2塞栓症は誰もが知る注意すべき合併症であり安全性に若干疑問があるとも言えます。

シドニーのトリスタン ヤン先生と

海外ゲストを交えた会長招宴では以前から仲の良いシドニーの天才 トリスタン ヤン先生と隣の席になりゆっくり話が出来ました。忙しすぎていつも日本に来てもトンボ帰りしてしまうのに下関だったからかえって一泊余分に出来た様です。彼は多分まだ40代後半ぐらいで日本人みたいな顔をしていますが中国人で子供時代に両親と共にシドニーに移民し、言語や人種の壁を乗り越え持ち前の超頭脳を発揮して今ではシドニーの3病院を掛け持ち執刀する心臓外科医になっています.論文もいっぱい書いていますしビデオを中心とした先進的なオンラインジャーナルのチーフエディターを30代の頃からしています。今回はMICSや、胸腔鏡を使った動脈瘤手術の講演でしたが何しろアイデアマンです。でも更に素晴らしいのは海外の外科医には珍しくオペが緻密で丁寧なのです。そのため若い頃にはオペ室スタッフからオペが遅いとか言われていた様です。2016年に私がJAPANミックスサミットを主催した時に講演に呼び初対面でしたが、彼に「僕は君の手術のスタイルは好ましいと思う」と伝えて励ましました。オペはまず丁寧にやるのが第一でそれを重ねていくうちに時間は自ずと早くなるべきものと思います。最初に時間の目標を決めて焦り猛った手術を行うのは愚の骨頂であり、時間が早い事を売りにする外科医はいずれ自滅していくのを私の40年にわたる外科医人生の中で見てきました。ヤン先生は今では普通にロボット手術を午前午後で一日2件こなし、これならもうオペ室スタッフから遅いとか言われることもないでしょう。

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AIはあまり信用できないかも

チャットGPT4.0にEU諸国の中で日本より人口が多い国があるかと聞いてみたところドイツは8400万人で日本の1億2300万人より多いという答えをくれました。日本語で聞いてみたら同じ間違いをしたので念のため英語で聞いても同じ答えでした。何か定型的文書を書かせたりすると非常に役立つのですが、この様な基本的事実に基づく質問にすら間違った答えを出すのでまだまだ人智を越える様なものではない、いわば能力に凸凹のある発達障害の様なものと思って利用すべきと思います。論文のピックアップを頼むとかなり役立ちます。AIの学習過程でネットに広がる偏見を学習してしまう事が問題だと言われています。結局ドイツ=EUの中心、先進国という先入観や人種的偏見がAIに学習されてしまっているという事ではないかと思います。

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胸部外科学会2024

竹村会長の胸部外科学会@金沢での私の発表は最終日11/4、指定演題でMICSの心筋保護と梗塞後乳頭筋断裂に対する緊急MICSの2題です。もう一つ、一般ビデオセッション11/2にHOCMに対する胸腔鏡下Myectomyを出してます。鏡視下Myectomyは学会で発表するのは今回初めてとなります。前尖を一度外すアプローチは良く知られていますが内視鏡を利用すれば中央を縦切りするだけで良く見えます。一般的に難しいとされるMid ventricular obstruction の切除が楽にできます。

HOCMに関しては米国で抗ミオシン薬も出てきましたので、薬の有効性が非常に高いなら外科治療がいつまで残るかわかりません。意外と左室内高血圧のために僧帽弁器質的病変を合併していたりAf合併のため症状悪化するケースが多いのでMV repair +Mazeなど左房アプローチの手術は一定数残る様に思います。正中切開での単独Morrow手術はいずれかなり減って、そもそも少ない手術ですがさらに稀な手術となりそうです。

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ISMICS Workshop 2024

11/8-9、大阪で坂口太一先生会長のISMICS Workshop が開催されます。

https://www.uproses.co.jp/ismics2024/

私は初日午前中に胸腔鏡下AVRのビデオライブを担当します。同時進行で東京ベイ菊地先生のMICSCABGライブ中継があります。AVRのcaseはそれ程困難症例ではなくオペの流れがわかりやすいものとしました。無編集ビデオを流します。切り貼りや早送りしなくても見ていられる手術をいつも目指しています。胸部外科学会の1週間後ですが学会では取れない十分な時間が使えるのはWorkshop ならではと思います。多数の先生に参加してほしいですね。

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論文 学会

CABG両側内胸動脈使用デザイン別遠隔成績をまとめた多施設共同研究がAnnals of Thoracic Surgery に掲載されました。

両側内胸動脈を用いたCABGデザインをどうするのが良いか?In-situ LITA-LAD,In-situ RITA-LCxが伝統的には最も良いと思われていましたが今回の多施設共同研究では異なる結果となりました。倉敷中央病院、豊橋ハートセンター、京都府立医大、と当院の症例の遠隔データを林泰成先生が中心となり解析しました。統計顧問は大阪公立大の新谷先生にお願いしています。結論は下記Abstract をご覧下さい。

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EMIのMICS練習器アップデート

内視鏡付きトレーニングbox

EMIファクトリーから従来品よりもっと本格的なMICS練習キットが発売されています。従来のものは個人向けで、付属のカメラはUSBカメラをタブレットに接続したものでした。正直なところ画質と画像の遅延の面で鏡視下操作を行うのはかなり厳しく、主に直視下MICSの練習用と思えます。新型はちゃんとした内視鏡とモニターが付いており鏡視下MICSの練習に向いてると思います。新型の開発には私は特にコミットしていません。施設で1台購入する用途を想定しているそうです。価格は会社にお問い合わせください。気合い入れれば個人で買えるぐらい安いとだけ言っておきましょう。私は既に定年も見えてきた歳ですが、もし30年前の自分だったら自前で買うかもしれません。いや、30年前の自分なら新しいバイク買っていたか?

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長さの異なるループ作成器

人工腱索ループ法はMICSに適した方法ですが、複数個所に一定の長さの腱索を固定する事になるのが弱点でもありました。特に前尖には中央のA2と、端になるA1.A3には異なる長さの人工腱索が適切であり具体的にはA2よりもA1,A3への腱索を3mm程短くした方が出来上がりが良くなります。今回もEMIファクトリー様に依頼し10mmから34mmまでの1mm刻み任意の長さのループを同時に作成できる器具を作成してもらいました。私が行ったのは基本的な構造の決定、ピンのサイズと孔位置を計算して指定しただけです。構造は見ての通り単純です。頂点にある要ピンと、作成したいループ長の所にピンを立て引っ掛けてループを結紮作成していきます。例えばA2用に23mmを2ループ、A3用に20mmを1ループの計3ループを作成する様な方法です。EMIファクトリー様から購入可能となっています。代理店経由でデモ器の貸し出し可能です。当院で半年ほど前からプロトタイプを使用し、良くあるA3,PC,P3逸脱の様な症例には重宝しています。使用法には若干のコツが要りますので詳しくは私に直接お問合せください。

価格は13万円との事です。思ったより安い。これを40万円で売るといわゆる生産性が高いという事になる訳ですが。

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MMCTSにHOCMのビデオが載りました

欧州胸部外科学会EACTSのオンランインビデオジャーナルのMMCTS、The Multimedea Manual of Cardio-Thoracic Surgeryに肥大型心筋症(HOCM)の完全胸腔鏡下心筋切除のビデオが掲載されました。僧帽弁前尖を縦切りにして視野確保する方法です。https://mmcts.org/tutorial/1916

HOCM治療には手術による心筋切除がClass I推奨されていますが通常は胸骨正中切開、経大動脈弁アプローチが標準手術法とされています。一方MICSで経僧帽弁的に切除する事も近年報告がありますが僧帽弁前尖を一度弁輪から切り離して視野確保する方法が主流でした。しかし僧帽弁前尖の弁輪~ヒンジ部分は弁開閉に伴い大きく曲がる部分なのでここに縫合線が来ると縫合線の破綻が生じるリスクが高い事、またしばしば必要となる自己心膜補填もパッチの硬化、断裂のリスクがありました。本来的に弁膜症ではないHOCMに対して新たに弁の問題を付加してしまうのは問題があり縦切りする事により弁への影響を最小限に出来ると考えています。すでに2014年から行っており長期的にもおそらく問題は少ない様に思いますが症例数が少ないためまだ断定的な事を言える程のエビデンスはありません。

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トロッカーの更新

EMIファクトリー様に作成してもらっているトロッカーの形状を新しくしました。と言っても2年ほど前からですが。通常どこのメーカーのトロッカーにもネジ形状が先端まで切られていますがよく考えるとネジ形状部分が引っかかるのは皮膚の部分であり先端側の軟部組織に当たる部分にはネジがあっても仕方ない訳です。かえって挿入時に皮膚に引っ掛かり抵抗になるだけなので先端1/3はスムーズ形状にして途中からネジきり形状を付けました。色が黒いのはDLCコーティングで器具との抵抗を軽減する目的です。サイズは内視鏡用の10mm,器具ポート用の5mm,7mmです。器具ポートは5mmの方が器具シャフトとのガタが無く安定します。7mmは先曲がり鑷子やハサミの挿入もできます。

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ECSC参加

22年9月にECSC Endoscopic Cardiac Surgeons Clubの発足集会に招待され、ギリシャのテッサロニキ市に行ってきました。ECSCはペリエ先生が会長で21年春に世界中の胸腔鏡下心臓手術を行っていて一定の論文発表のある医師に呼びかけがあり発足しました。コロナ禍でもありWebで会合を何度か行い、今回の発起集会はギリシャのPitsis先生が会長で行われました。日本からは今のところ、私と当院の細羽先生と所先生の3名が会員となっています。3Dプロジェクターを用いたペリエ先生のライブ僧帽弁形成手術、Pitsis先生の胸腔鏡下AVRライブが行われました。またこの分野の開拓者であるVanermen先生の特別講演は感動的でした。2000年頃先生が胸腔鏡下手術を始めた頃は多くの反響とともに批判も少なくなかった様です。当時のアナログ2D内視鏡で手術を行うのは困難を伴った事でしょう。しかしこの手術を開拓し、多くの弟子が現在ヨーロッパを中心に鏡視下手術を行い徐々に広まっていきました。Vanermen先生のチャレンジ精神はとどまるところを知らず、近年は実機のグライダー操縦もしているそうです。驚きのバイタリティです。近年3D内視鏡の登場が鏡視下手術の動きを加速させ、それまでは直視下MICS推進派であったイタリアのGlauber先生のグループも3D鏡視下に移行しこの会の中心的な運営を担っています。

私は完全鏡視下ダブル弁(大動脈と僧帽弁)手術の成績を発表し、3-port法の操作性の良さをアピールしました。この発表にVanermen先生から斬新で素晴らしいとお褒めをいただきました。先生が確立された方法とはだいぶ違うアプローチなのですが、チャレンジを認める柔軟な精神をお持ちなのだと思います。

ロビーにて。右から細羽先生、Vanermen先生。Tomasso,Mario, Marco Solinas先生。私は写真撮ってるので写ってません。
Vanermen先生の記念講演。横はPerier先生。
滞在期間中この様な快晴が続く気持ちの良い地中海気候をノーマスクで満喫しました