捨てる事、得られるもの

テレビドラマでカッコいい役者さんが心臓外科医の役を演じる時、手術のシーンではルーペと輝くヘッドライトを着けるのがお約束です。医療指導の先生のお陰か、なかなかの手つきでワンハンドノットを作り糸結びをしています。これらは心臓外科医らしさを象徴するアイテムとも言えます。

しかし、私が完全内視鏡下AVRをする時、ルーペもヘッドライトも用手結紮も使いません。30年慣れ親しんできたものを捨てるのは一般的には抵抗があり、私も段階的に進めましたがある時点で割り切りました。目で見る代わりに3D内視鏡、指の代わりにノットプッシャーで全ての糸を結びます。

こうして割り切ると、指が届くところまで大動脈を引き上げたり、届く範囲の前胸部に創を作る必要がなくなります。もちろん開胸器も要りません。むしろワーキングスペースを得るためにあえて大動脈まで距離があり、美容的結果も良い側胸部に創を作る方がやり易くなります。大動脈基部が狭くても、遠くても「指が届くか?」という心配からも無縁になります。創も痩せ我慢して小さめにして、最後の真皮連続縫合で縫い縮めて「5cmでやりました!」と学会で見栄を張る必要もなくなります。人工弁が物理的に通過してくれる最小限で良いのでリアル4cmで十分となります。

手術に限らず、何でもかんでも折り込むよりいっそ捨てる事で得られるものもあると思います。ちなみにルーペは着けませんが、歳のせいで遠近両用眼鏡は必須です。

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